「はあぁっ???!お店辞める??!辞めてどうするの?」
「自分でお店やるって、どこで?」
「いつ頃を考えているの?」
「まぁいい、はい。とりあえず、分かりました。」
美容師が独立開業をする時に必ず通過する「退職」
本人にとっては数年かけて温めてきた思いであったとしてもその報告を聞く方は唐突です。
心の準備のないところに伝えられる決意は、それを伝えた時点から、双方の関係性を大きく変えていくことになります。
◇
こんにちは、まもさんです。
今日も前回に続いて、
「いつか自分で美容室を開業したい!」っていう夢を持って頑張っている美容師さんに向けて記事を書いていきます。
「いつか、、、!」なあなたも、
「実はもうすぐ、、、!」なあなたも。
よかったら最後までご覧になっていってください。
独立開業は、裏切り行為?
現在の私は、自身のサロンを運営する立場にありますので。
そういう意味で以前は「(開業を理由に)退職を告げた」側であり。
現在は「退職を告げられる側」でもあります。
中途で採用してもらったサロンであっても、
新卒で1から教育を受けてきたサロンであっても、
「退職」を告げる時というのは多少なり複雑な気持ちが芽生えるものではないかと思います。
まして、独立開業ということになれば、
それは見方によれば、所属していた店舗にとっての競合店舗。
告げた先のサロンから、
「おぉ!そうか!おめでとう!!頑張れよ!!!」
素直な応援を期待できないケースは少ないのではないでしょうか。
オーナーの心中は、、、?
まずは現在の私の立場を踏まえて、
それを告げられたサロンオーナーの視点からこのテーマに沿って書いてみようと思います。
まず何よりも先に去来するのは、
この目の前にいる大切な従業員がひとり自分のところを去っていくんだな、という寂しさではないでしょうか。
うーん、何に例えるといいのでしょうか。
読者全員に共通でイメージしていただくのであれば、恋愛関係においてパートナーからお別れを告げられるシーンでしょうか。
もちろん退職も開業もすべて、生き方ですから。是も非もありません。
ただ、これまでとは違う生き方を選ぶんだという事実。
そこにオーナーである自分の力は必要ではなくなっているんだなという事実。
これだけでも、ご飯3倍分じゃ効かない精神的なダメージがあるのではないかと思います。
くわえて、あなたは開業を希望するステータスの美容師。
売上面でも一定以上の貢献もあったでしょうから、会社としてその売上をなくしてしまう焦りのようなものがでてしまうかもしれません。
ただそれでも、ほぼ大半のオーナーが、自身にもまた開業を決意した時があったことを忘れてはいませんから。
心の中では大いに応援して気持ちよく見送りたい、見送れる自分でありたいという葛藤に似た気持ちであなたと向き合っています。
中途半端に手離すのでは潔くない。
ここは去る者追わず、だ。
「そうか。あなたの気持ちはよくわかった。」
「【応援するよ。】」
、、、ただここで誤解を生じやすいのが、
この、【応援するよ。】が引き金で起きる悲しい結末。
オーナーというのは、よく知っています。
「応援する、、、ってことは、そうか。いいのか。」
所属していたサロンの500m先に新規開業した美容師の話。
サロンで共に働いてきた後輩や同僚、上司の気持ちはお構いなし。
翌日から顧客に「私、独立するんです!」キャンペーンを始めた美容師の話。
「よかったら私とどう?一緒に辞めて開業しない??」
秘密裏にスタッフの引き抜きキャンペーンを始めた美容師の話。
、、、、、、。
「だって、【応援するよ。】って言われたし。」
オーナーというのは、独立していくあなたを応援してあげたいという気持ちと変わらないくらい強い気持ちで。
自分が現在雇用している美容師たち(またその家族)の将来を支えていけるよう、日夜経営に励んでいます。
もちろん「従業員の退職」それ自体は事業リスクでしかないので、
それが敵対的な独立開業のためであったとしても、あとの祭り。
ただの泣き言でしかないのですが。
「なんだよ、、、
なんか気まずい感じかよ〜〜〜。
応援してくれないのかよぉおおお。。。
まだここで働けっていうのかよ〜〜〜。」
心の中では応援していても、
経営者だからこそ言葉にしない(できない)一言があること。
オーナーの頭の中に去来するものがどのようなものであるか。
もしあなた自身もオーナーになろうというのであれば、想像くらいはしてみてもいいかもしれません。
それでも円満に退職したほうがいい?
所属サロンとの退職交渉をおざなりにしたり、
不調のまま終わらせることで、
円満退社に至らなかったケースというのは
エピソードを挙げればキリがありません。
私が知っている限りでも、
もう、、、ね。
あちゃー・・・としか言いようがない、
「まぁまぁ、、、大人気ない・・・」
もちろんその通りでしかないのですが。
ただ、その所属していたサロンからどんな圧力があったとしても、そこに是非を問うても仕方がないものです。
いや、へこむ。めちゃんこ、へこみます。
それはアドラー心理学的に言えば「課題の分離」私にどうこうできる問題じゃねーし。
とかなんとか言ってみて、
頭ではわかってみたつもりにするけども、
めちゃんこへこむ。
でも、それでも。
「商いを営んでいく。」
これから始まる経営者としての時間の中には
そういう覚悟が問われる場面が少なからず、
用意されています。
ここがまず経営者になる上での
一丁目一番地と割り切って、
粘り強く退職交渉の機会を持つ。
あるいは振り切って、
「圧力?かけてくるならかけてくればいい!」
引き受ける覚悟をお決めになるのがいいかと思います。
私が退職を伝えたタイミング
ここから先は包み隠さず、当時の私の退職エピソード。
10年以上も前の昔話ですので、
興味なければ読み飛ばしてもらっても差し支えありませんw。
◇
一般企業にお勤めの方が転職をされる際には、
およそ在職中に転職活動を行い面接受験、
合否判定を受けて退職交渉に入るのが一般的。
これに倣えば、
美容師も在職中に物件検索を行い、不動産契約、
資金調達、開業日の目安が経ってから、
所属サロンに退職日を伝えるのが一般的。
???!
って、え!!!?
ほんとに???
実は、記事冒頭の、
「はあぁっ???!お店辞める??!辞めてどうするの?」 – 「うん、自分でお店やろうと思って。」
「自分でお店やるって、どこで?」– 「いや、まだ決めてないよ。」
「いつ頃を考えているの?」- 「いや、それも。だって今日会社に伝えて、今その帰りだし。」
「まぁいい、はい。とりあえず、分かりました。」
これ、実は会社に退職を伝えた日の夜に、
電話で報告をした時の実家の両親の反応です。
私の両親は美容師とは関係のない仕事をしてきた大人だったので、「次のアテ」がないままに会社に退職を告げてくる息子の無知に、おそらく呆れたのではないかと思います。
◇
確かに、諸先輩方の独立による退職前後の難しい事情を近くで見ていたことも影響していたと思いますが。
当時の私からすると「独立を決意した時点」=「退職を伝えるタイミング」。
くわえて所属サロンへの不満、というよりは「自分でやってみたーい!」
そちらの方が優っていた世間知らずな、お気楽29歳でしたので。
「円満に退社させてほしい(圧とかやめて」が、退職に際してはかなり強い希望でした。
当時身に余る役職もいただいていましたし、
半年後には新卒生の配属も決まる折、
私一人が辞めることを「欠員1名」として
会社に知っておいてもらえればという気持ちも
あったので、なるべく迷惑のかからない
早い段階でお伝えするのがお互いに良策では、
という認識でした。
(*ただのちにこの判断が開業物件の決定期限に引っ掛かり、冷や汗をかくというw)
◇
それでも先程の話ではありませんが、
やはりオーナーは、
「反対だ。」ともおっしゃいませんでしたが、
「応援する。」とも、言いませんでした。
「あ、賛成されていない(というより実力不足なんだな)。。。」
とは思いましたが。
(当時)直営20数店舗、200人弱の社員を背負っている経営者の、言葉に表さない「言葉」。
態度だけで伝えてくださる「凄み」を感じたものでした。
その後の会社からのリクエストは、
「退職を伝えることは可。ただし、今担当している顧客様は全員、後輩たちに引き継ぐこと。」
それ以上でも以下でもありませんでした。
そもそも小規模開業の計画だった私は、
スタッフを引き連れてなんてことは考えていませんでしたし(ついてくるスタッフもいなかっただろうなあw)。
当時成長著しい後輩もいたので、彼の名刺を中心に顧客様にお配りしたりして。
でもね、、、難しかったですね・・・。
美容師さんならわかっていただけると思いますが。
「退職を伝えることは可。ただし、今担当している顧客様は全員、後輩たちに引き継ぐこと。」
これって、
「退職を伝えることは可」から始まる、
→客「え?!辞めちゃうんですか?!どこいくんですか???」からの、
私「実は自分でお店やるんです。」
→客「え?!それどこなんですか?!私そこに行きたい!」
そこに、会社の、「ただし、今担当している顧客様は全員、後輩たちに引き継ぐこと。」
「あははは・・・・・・」。でしかないw。
正直白黒はっきりつけた引き継ぎができたのかと言えば、、、
もう12年も前の話、時効成立でしょうかw。
グレーなところが残った半年間でもありました。
ただ最終勤務日。
所属店舗だけでうちうちに送別会を持ってくれたこと。
そしてそれが輪に輪を呼んで、最終的に他地区他店舗の先輩後輩たちが続々電車乗り継いで駆けつけてくださって。
幹部が
「ちょ、さすがに(辞めて開業していこうとする人間の送別に)集まりすぎだ。帰れ、もうこれ以上来なくていい。」令を出してくれるなんていうエンディングになったことは、今でもいい思い出です。
まとめ
歳を取るとどうもいけませんね、思い出話のボリュームが大幅に長くなりました。
「美容師が独立を理由に退職する時に気をつけておきたいこと」まとめましょう。
・開業の希望を報告し、円満退社への調整を図っていくことは経営者になっていく上での一丁目一番地
・我も人なり「オーナーもまた人なり」。多少背伸びしてもオーナーの心中を推察するくらいの度胸持って報告にいきましょう。
・申し出たのに「〇〇してもらえない」はNG。自分にできることに集中して粘り強い交渉を。
・多少の間違いも10年すれば笑い話。たとえ円満に退職できなかったとしても、本当に大切にしたいことは何か、傷つけたくない人は誰か。を大切にできていればOK。前向いて計画進めましょう。
・あと、ある程度の場所は決めておいてから退職の報告をすると開業計画は少しスムーズに進みます(←昔の私に言いたいw
どんなケースもひとつひとつ例外ですし、オーナーとなっている今の立場で書くテーマとしてはデリケートなテーマで、書くのにえらい時間かかってしまい(後悔しました)ましたがw。
開業を希望されている美容師さんにとってお役に立つ内容になっていたら嬉しいです。
*****
最後になりますが、こちらのTOOLMAGAZINEで記事を寄せるようになって1ヶ月。
他人様のメディアに記事を寄せる立場としては私のチャレンジも今年から始まったばかりです。
今後も良質な記事をお届けしていきたいなと思っているので。
読んでくださった方は感想やフィードバック、遠慮なくTwitter(DMでもウェルカムです)の方にお寄せいただけたら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
2009年創業 hair design space i.chi.e (千葉県/浦安市)オーナースタイリスト
2021年で美容師としてのキャリア20年の節目を迎え、これまで以上に年代を超えた繋がりや貢献を実現できるきっかけを得たく寄稿させていただくこととしました。
一美容師の視点、一運営者の視点から有益な投稿をお届けしていきます。
コメント