伝える。 伝わる。タナカエミ

女性の働き方

ワタシは美容師である。

美容師である前に女性。

途中から母となった。

こだわりすぎた服装はもともとしていなかったが、割と洋服は好きな方だ。 しかも、割と大柄だったり、色調の強いモノ。 おそらく顔が地味で個性的からは程遠く生きてきたからだ。

服装って、個性?

自分アピール?

好きなモノを着る。

何?

小学生の頃は、ママが選んで買ってきた。

中学生になると、雑誌を真似た。

高校生になったら、友達と似たような格好。

バイト始めたらバイトにちなんだ服装。楽を求めた。

短大生は、そーだなぁ、男子ウケかな。 この時は一番好きじゃない格好してたように思う。

美容学生の頃。

美容学生らしく、というのもモチロンあったけど。 とにかく好きな格好をしたくて、ウィンドウショッピングしまくった。 (今みたいにネットなんかない。雑誌かテレビか…)

自分だけのアイテム!

それを探すのが楽しくて仕方なかった。

髪型も。 それこそ、次はどんなんにする? そんな話ばっかり。

とうとう、美容師時代。

ワタシの時代は、アシスタントはお店の名前が入ったエプロンを着用しなきゃならなかった。

夏は白。冬は黒。

お客様の髪型を最高に美しく見せる為には、 お仕上げをするアシスタントはそれしか選べなかったのだ。

Tシャツを派手にしたり、ボトムや靴で変化を感じさせたり。

スタイリストに昇格すると同時に私服での営業が許された。

すると、どうだろうか?

何を着たらいいかわからない!

あんなに個性的がいい! 好きな服を選びたい!! って思っていたのに。

そう。そうなんだ。 自分の個性ばかり押し付けてもダメなんだ。 お客様が主役だから。

ワタシはお客様を輝かせる為の、影なるスターなんだ!

そこからは闇雲に服装を決めなくなった。

鏡を見せた時に写りが良い服。 シワになりにくい服。 ワタシのお客様のターゲット層に合わせた服。

そして、事件は起こった。スタイリストになって三年目。

後輩が見るからに薄い色のいかにも古着の破けたデニムを履いてきた。

「そのデニムはプライベートで履いた方がいいね。お店ではやめた方がいいよ。」

「なんでですか?」

「汚ならしいから。」

「…。」

何故なのか?がきちんと説明出来なかった。

偉そうに言いたくなかったから。

大した自分でもないのに、何を言ったらいいかわからなかったからだ。 自信もなかったんだ。

たいして指名のお客様もいないのに、偉そうに言うだなんて。 自分も後輩もモヤモヤさせてしまった。

そして、今現在6年目の山下くんが入社した時。

どんなお客様に。自分がどう見られたい? と聞いた。

いずれは子供からお年寄りまで、みんなに慕われるような、安心感の与えられる美容師になりたいと彼は答えた。

なら、スタイリストになるまで毎日襟のある服を着てごらん?もちろん毎日じゃなくてもいいんだけど、シャツのイメージの人になってごらん?と伝えた。ズボンはなるべく穴が開いてないやつね!

彼は、なるべく守っていた。 彼の素直さにはいつも驚かされる。 そして、本当にやってのけたんだ!

彼は現在。 下は小学生、上は72歳のお客様に指名をいただいている。

スタイリストになってしばらくしてから、 彼はワタシにこう言った。

店長があの時、シャツを着ろって言った時に なんで?って思ったんですが、店長が言うからやってみようと思いました。 でも、やってよかったです! 毎日きっちりした気持ちで取り組めました。 気持ちがシャンとしてました。 お客様も若すぎる僕だと心配しますもんね。

彼には伝わっていたようだ。

シャツを着ないでカットする彼。 自信に満ち溢れ、 優しい笑顔で今日もお客様を素敵にしている。

伝えるって難しい。 伝わるように伝える。 それは今も変わりはない。

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