暦の上では春ですね。
弊社にもお付き合いのある専門学校様から就職説明会開催のご案内が続々届く季節です。
今日は、表題の通り。
特に将来開業を目指している美容学生の方にとってのベターなサロンの選び方を考える、そんなきっかけになるような記事をお届けします。
たとえばこの春から美容学校2年生になる学生さんはそろそろ就職活動が本格化する時期ではないでしょうか。
「将来自分でお店やりたいなーって思っているけど、そんな自分はどんなサロン選びをしたらいい?」
そんなモヤモヤっとしたところにもお応えできる記事になれば幸いです。
◇大きい美容室、小さい美容室
今回の記事ではサロン規模の大小に基準をおいて、「美容室」全体をざっくり眺めてみます。
まずはひとつのフロアにスタッフが少なくとも10人以上の美容師が常時働いている「大型店」。
*何を以て「大型店」という表現にするかきちんとした定義があるわけではありませんが、自分以外に一緒に働く美容師が最低でも10人はいる環境を、ここでは「大型店」として記事を進めます。
一方、ひとつのフロアに多くても7〜9人、少なければオーナー含め2〜3人で営業している「個人店」。
*これも何を以て「個人店」という表現にするか定義はとても曖昧ですが、自分以外に一緒に働く美容師の人数が少ない環境をここでは「個人店」として記事を進めます。
◇「大型店」で働くメリット
まずはひとつのフロアにスタッフが少なくとも10人以上の美容師が常時働いている「大型店」。
こういうサロンで働くメリットは、3つあります。
まずひとつめは、大型店で働くことで「多くの美容師のサロンワークにふれることができます。」
スタイリスト、アシスタントの人員構成比もサロンによって様々ですが、たとえば「7:3」。
スタイリスト7人を3人のアシスタントで支えているサロンというのも決して珍しくありません。
こういう環境でのサロンワークを重ねていくと必然、7人のスタイリストの仕事の進め方、技術を間近にみながら自分のスキルを高めていくことができます。
またスタイリストの方が多い環境ということになると、任せてもらえる仕事も、より責任の大きいものを任される機会が比較的早く訪れやすい傾向があります。
次にふたつめ。
それは、「同期(同僚)と切磋琢磨することができる」ということです。
もちろん先ほどの7:3の例で言えば、3人のアシスタントはあなたにとっての先輩。
その時点で同僚(同期)というわけにはいかないかもしれませんが、ゆくゆくあなたもその「3」の中に入っていくということになればアシスタントという枠で切磋琢磨が起こるでしょうし。
ゆくゆくスタイリストになれば、今度は「7」の中でお互いに技術や売上を競わせながら自分を磨いていくことができます。
最後に3つ目。
それは「先輩・後輩・同期との協調性、また多様なお客様との多様な関係性のなかで学ぶことができる」ということです。
何かにつけて人数がいる環境でのサロンワーク。
お越しくださるお客さまにも多様性がありますし、その多様なお客さまに高い満足度をお届けしていく上では「協調性」や「相互理解」がとても重要な要素です。
時には認識や意見の対立が生じることもありますが、それらを通して自分の価値観を高めたり、高いレベルで協調性を育んでいくことができるというのは人数がいるサロンで働いているからこそ。
大きなメリットのひとつと言えるのではないでしょうか。
【大型店で働くメリット】
- 多くの美容師のサロンワークにふれることができる
- 同期(同僚)と切磋琢磨することができる
- 先輩・後輩・同期、そして多様なお客様との関係性のなかで多様性や協調性を学ぶことができる
◇「個人店」で働くメリット
一方、ひとつのフロアに多くても7〜9人、少なければオーナー含め2〜3人で営業している「個人店」。
こういうサロンで働くメリットはどうでしょうか。
やはりこれも3つ、挙げることができます。
まずひとつめ。
それは、「ひとりの技術者についてじっくり学ぶことができる」ということです。
あくまでも相対的な、比較のうえでの話ですが。
オーナー含め2〜3人少人数で営業している「個人店」の場合、いろいろな仕事を近い距離で定点で見て習うことがしやすいです。
くわえて人数が少ない分、技術的な個性差(クセ)のようなものも少ないケースがほとんどで、じっくり技術を学びたいという気持ちには応えてもらいやすいケースが多いです。
次にふたつめ。
それは、「マイペースで技術を学んでいくことができる」ということです。
たとえばひとつの技術を同僚同期といっせいに練習していく環境に比べると、他の人のステップアップに気持ちを惑わされたりすることは少なく(「私だけまだ〇〇ができない・・・」etc)。
また仕事を同期同僚と分け合うような環境に比べてみると、どの仕事が任されてどの仕事が任されないものか。
あるいは自分が次に何をすればいいのかについて、サロンから指示を受けてからあたることも多く、おおよそ自分の仕事のレンジもはっきりしているケースが多いです。
そして、最後に3つめ。
それは、「お店の運営(の一端)について学ぶことができる」ということです。
これはキャリアをある程度重ねた先、ということになりますが。
少人数で運営している分、全体像が把握しやすく。
先輩からのちょっとした「おつかい」から始まり、たとえば材料の発注を担当しながら担当ディーラーの方と近いところでお話をする機会を得たり、関係性という点でも直接オーナーとお話をすることも叶いやすいケースが多いのではないでしょうか。
【個人店で働くメリット】
- ひとりの技術者についてじっくり学ぶことができる
- マイペースで技術を学んでいくことができる
- お店の運営(の一端)について学ぶことができる
◇ 私がおすすめするのは・・・
ここまで、働く人数に基準をおいて美容室を「大型店」と「個人店」とにわけて、それぞれのメリット(特徴)について整理してきましたが、いかがでしょうか。
「ご自身の好み」とは別に。
将来自分でお店をやりたい!という視点に立った時、あなたが選ぶサロンは「大型店」と「個人店」どちらがいいのでしょうか。
どちらにも同じ数だけメリットがあることをお伝えしてきた手前、
「一長一短」
どちらも、いい!と言ってしまいたいところですが(ズルいw
あえて。
あえて、言い切るのであれば、
将来自分でお店をやりたい!というあなたが最初に選ぶサロン。
私は、「大型店」をお薦めしたいと思います。
◇ 10年以上運営しているから、実感していること
自分でお店を開業するような美容師になる!
そのために必要なことって、本当に、いろいろあります。
もちろん技術力は当たり前(下手な美容師がやっているお店に行きたい客はいません)。
接客力も大切ですし、見込客に自分のお店のことを知ってもらうマーケティング力も必要、たとえばスタッフを雇用してお店をするのであれば教育マネジメント力も問われる場面もあるでしょう。
もちろんそれらの能力、スキルは一朝一夕に身につくことではないですし、お店にお勤めしているときにはできていなかったことでも、開業して以降勉強してできるようになっていく(成長していく)経営者の方もたくさんいるので、それぞれひとつひとつのスキルの前に足をすくめてしまうことは、まったくないです。
ないんです、が。
どのスキルを得る上でも共通して大切なこと、ひとつ。
それは、
「より多くの人と関わって自分の伸び代を育む時間を持っておくこと」
開業を決意してからの時間、実際に開業して以降、運営をつづけていくなかで大切なのは、やはり「人間力」。
この「人間力」は、若いとき(特に20代のうち)にたくさんの人との間に揉まれる機会を持っている方が、より早く、底堅いものを身につけることができるのではないかと私は思っています。
もちろん好きな仕事を気の合う仲間とだけ。好きを詰め込んだお店をやって、楽しくワイワイしているイメージというのはストレスも少ないですし快適なものですが。
「若い時の苦労は買ってでも」と同じように、「いずれ開業する!」なら。
「お勤めの時の苦労は買ってでも」しておいたほうがいいと私は思います。
人の間にとびこめば、どうしても価値観の合わない人との接触も起きます。足を引っ張られるような思い、理不尽な体験をすることもあるでしょう。
ただ残酷なことを言うようですが、そのようなストレスのかかる体験を誰か上司や先輩に守ってもらうでもなく、最前線、先頭切って引き受けていくというのが、いずれ「自分でお店を出す」サロンオーナーに求められるたいせつな資質のひとつでもあるんです。
ちょっと想像してみてほしいですが、もしあなたがサロンワークであるミステイクをしてしまって。
オーナーともどもお客さまの前で頭を下げなければいけない時。
そのオーナーが、ミステイクの責任を全て
「あなたのせいで頭を下げなければいけないなんて、ほんと理不尽。」
そんな、「人のせいにしてくる」オーナーだったらどうでしょうか。
「わぁああおぅ!」
・・・ちょっとがっかりしてしまいませんか?
最初から「立派なオーナー」になんてなれっこない!なんですが、最初からなれない分。
お勤めの時にしんどい部分を先受けして自分が人間的に成長できる環境。
そんな視点でサロンを選んでおくといずれ将来開業してからのスピード感、安定感には確かなものが育まれているのではないでしょうか。
◇まとめ
- 大型店で働くメリット、個人店で働くメリットはそれぞれ一長一短。
- どちらの環境でも一朝一夕にサロンオーナとしての資質が育まれるわけではない。
- 「より多くの人と関わって自分の伸び代を育む時間を持っておくこと」が何よりたいせつ
- 「お勤めの時の苦労は買ってでも」しておいたほうがいい
これから就職活動を控える美容学生さんを中心に、この記事をきっかけのひとつにしてもらえれば幸いです。
またこのTOOL MAGAZINE には年齢層も幅広く(上に広げているのは私ですがw)、いろいろな立場で美容の仕事に関わっている方たちが記事を寄せてくれています。ぜひ他のライターの記事もご覧いただき豊かな美容師ライフを育むきっかけにしてもらえれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
2009年創業 hair design space i.chi.e (千葉県/浦安市)オーナースタイリスト
2021年で美容師としてのキャリア20年の節目を迎え、これまで以上に年代を超えた繋がりや貢献を実現できるきっかけを得たく寄稿させていただくこととしました。
一美容師の視点、一運営者の視点から有益な投稿をお届けしていきます。
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