都市部を中心にサロンオーナーになっていくキャリアステップも多様化の波が及んでいるように感じることもありますが、それでもまだ現在ほとんどのサロンオーナーは、「美容師」出身者。
アシスタント時代を経験していないサロンオーナーというのは、ほとんどいないというのが実情ではないでしょうか。
そこで今回は、「いつか自分でお店を持ちたい!」そんな意志を持ってこれから美容師として活躍していこうとされている方(あるいは現在アシスタントとして活躍されている方)に向けて。
「そんな私、アシスタント時代をどんなふうに過ごしたらいい?」
をテーマに記事をお届けします。
キーワードは、
3つの「人より多く」。
ぜひ最後までご覧ください。
人より多く「〇〇を経験しておく」
まずひとつめの「人より多く」は、
「雑用」です。
うぇええー!まじかー!いきなりー!なんて声も聞こえてきそうですが。
ここは黙ってw、大いに人より多くの雑用を引き受けてください。
理由が、3つあります。
まずひとつは、雑用を人より多く引き受けると、あなたの仕事の処理速度が飛躍的に成長するからです。
雑用というワードにはいい印象を抱く人はあまりいないと思いますが、やはり誰もがすすんでやりたがらない、そんな雑用ほど次から次へ山積みになりがちなものです。
当事者として直面すると、
「えーーー私だってめんどくさいよー。」
そんな気持ちになるのも当然です。
もしかしたら時にはその雑用を押し付けたあなたの同期が、、、
「!!!!」
「先輩と一緒にヘアカラー塗らせてもらっているじゃんかー!」
そんな場面を体験することもあるかもしれません。
でも、うま〜いことその雑用を押し付ける術を身につけていくその同期と。
「っしゃ!じゃあいいよ!これとそれとあれと全部片付けてシャンプーは絶対私が入ってお客様に喜んでもらうんだから!」
そんな、あなた。
どちらが将来的にサロンオーナーとして大成されていくか。
自ずと明らかではないでしょうか。
美容師出身サロンオーナーとしてスタートを切る最初の数年、あなたは目も回るくらいにたくさんの業務と責任と、借金とをまずはひとりで引き受けていくところからスタートです。
仕事の処理速度が速いのであれば、速いに越したことはありません。
次にふたつ目の理由。
それは、雑用ほどお客様から評価を受けにくい仕事はないから、です。
たとえば、「コレ買ってきておいて。」
直接お客様に接客する業務には関係のない、先輩からの頼まれごと。
たとえば、「コレ確認してしまっておいて。」
届いた薬品や材料の収納。
たとえば、「コレそのままゴミ捨て場に持って行っておいて。」
その収納が終わった後の段ボールの片付け。
どの仕事も、どう扱ったところでお客様に直接評価してもらえるような仕事ではありません。
「〇〇さん、先輩からの頼まれごともしっかりやってありがとう。」
「〇〇くん、薬品や材料の収納、ごくろうさま。」
「段ボールたたんでくれて助かりましたよ。」
おっしゃっていただくことはおろか、お客様に気づいてもらうことさえ、ないかもしれません。
「うぉーーー・・・お客様に喜んでもらいたくって美容師の仕事を選んだのにそんなのあんまりだ・・・メンタルもたないよ・・・」でしょうか。。。
でも、少し想像してみてください。
自分が普段生活している時に利用しているあんな商品や、あんなサービス。
あなたはそれを提供している会社の
「オーナー(のお仕事)」
どれだけ知っていますか?
実際、サロンオーナーの仕事の本質もまたお客様からは見えにくいところで実行してこそ価値を生むような業務ばかりです(想像以上に地味なんですよ〜。
「評価を受けにくい仕事にこそ、自分で価値をつけていける」
そんなアシスタント。
むしろ、カッコいいと思いませんか?
最後に3つ目の理由。
それは、雑用の扱い方ほどあなたの人格を磨いてくれるものはないから、です。
自分のキャパを超えてきがちな、雑用。
誰も進んでやりたがらない、雑用。
そのくせ、おわらせたところでお客様から評価してもらえるわけでもない、雑用。
でも、実は。
やりようによってはちょっこしズルができてしまうのも、雑用。
さっきの例でいえば
たとえば「コレ買ってきておいて。」
先輩からの頼まれごとを済ませるふりして、ちょ〜っと寄り道してきちゃったり。
たとえば「コレ確認してしまっておいて。」
届いた薬品や材料の収納も、「ま、とりあえず突っ込んどけばいっか」。
たとえば「コレそのままゴミ捨て場に持って行っておいて。」
収納が終わった後の段ボール、「すずらんテープゆるゆる縛りだけど、まいっか。」
終わらせることをゴールにするなら、いかようにでも終わらせてしまえる。
みんなからの注目が集まる(評価を浴びやすい)お仕事だったらきっとやらないだろう、あなたの「お粗末」。
露呈してしまうのも、雑用。
なんですね。
そういう意味で雑用には自分の心がけがより強く映し出されますし、必然、それと向き合う機会も多く体験することになります。
「丁寧と、誠実。」
スタイリストになってから。
オーナーになってから。
どんな仕事にも通じる大切なエッセンス。
それはとかく面倒臭い、誰もやりたがらない仕事に触れる時にこそ発揮されるものです。
そしてしつこいようですがw。
お客様からは見えにくいところ、面倒臭いところ、誰もやりたがらないところから実行しているからこそ。
オーナーはオーナーとしての評価を得られるようになっていくんですよ〜(想像以上に地味なんですよ〜【2回目】。
雑用との付き合い方、少〜しだけでも、、、見方を変えていただけましたでしょうか。
人より多く「〇〇を観察しておく」
次に二つめの「人より多く」は、
「技術」です。
これについては異論のないところかもしれません。
たしかに最近は、ひとつの技術に特化することで脚光を浴びる美容師さんも少なくありませんし、それを土台にお店を開業されるといったケースもみられるようになりました。
ただ、それを実現するのはあくまでもさまざまな条件(望ましい立地条件を実現できる/集客導線を構築できるetc…)を整える能力が「別に」備わっていての話。
やはりあらゆる技術を平均点以上にお届けすることができる状態で開業していくのが、王道。
あらゆる技術へ幅広く奥深く探究心を持っている美容師がオーナーを務めるサロンのほうが長期にわたって安定した繁栄を望みやすい、というのは異論のないところではないでしょうか。
お勤めするサロンに在籍する先輩美容師が多い少ないなど環境面での違いはあるかもしれませんが、お客様に対峙しているひとりの美容師が持っている技術は、カット技術ひとつをとっても「多様」です。
それらを人より多くひとつでも自分に取り入れてみて、試してみて、習得、工夫をしてみて、自分のオリジナルを作っていく。
そういう体験はアシスタントの時にこそたくさんしておくといいのではないでしょうか。
人より多く「〇〇に連れて行ってもらう」
最後に三つめの「人より多く」は、
「飲みに連れて行ってもらう」です。
きたー飲みニケーショーーーーーンw
わたしお酒飲めませんけどーーー・・・!!!
様々な声が聞こえてきそうな気もいたしますが、よかったら最後まで。
理由が、ふたつあります。
ひとつは、
「人って仕事の時と、仕事を離れた時とでこんなに変わるんだ(変わっていいんだ)。」
体験をもって知ることができるから、です。
重ねていうといわゆる「飲みニケーション」は、いつも仕事場を一緒にしている人と、時々仕事場を離れた場所で取ることに意味があります。
もちろん全ての機会に価値があるとは言いませんし、もしかすると大半がアシスタントのあなたにとって心地いいものではないかもしれません。
ましていずれは自分でお店をやりたい!そんな強い意志を持っているあなた。
「そんな時間あるんだったら家帰って何か別のことやりt・・・」
ただただ煩わしい、回りくどいもののように感じることも多くあると思います。
でも、仕事の時にはとても話しかけにくかった先輩が、その席になった途端、サロンでは絶対に教えてくれないだろう成長へのヒントを教えてくれるなんてことも(たまに)あります。
またそんな先輩がその席になった途端とても打ち解けやすい一面を見せてくれるなんてこと、(これはけっこう)あります
(*余談ですが、美容室のような職人仕事をする職場にはそういう先輩がいる傾向が強いです)。
そしてなによりお客様から多く支持を集める、あるいはスタッフからの人望を集める美容師が、仕事を離れた場所でどういうコミュニケーションをとっているか、どういう時間(お店)の使い方をしているのか。
近くで体験することができること、これは「いずれ・・・!」の意思を持っているあなたにとっては大いにプラスな体験になるはずです。
そしてもうひとつの理由。
(これは特にお酒があまり得意ではない方にとって、という限定付きですが。)
それは、仕事終わりの飲みニケーション、これが「(損して)得をとる」ことを最も体感できる機会だからということです。
「もうそろそろ帰ろうよ〜〜〜・・・」
「まだ行くの〜〜〜・・・?」
「お先に、、、なんて言えないし。」
実は当時、私自身、お酒がとても弱い・・・ということもあり、正直仕事後のこういうコミュニケーションは大の苦手分野でした。
でもこれは後から当時の先輩に聞いた話ですが、
「もうそろそろ帰りたいころなんじゃないかな・・・?」
「まだ行くのかよ〜。。。なんて思っているんじゃないかな?」
「お先に、、、とは言えないだろうしな。」
実は連れ回している先輩の方もまた、後輩である私の気持ちを案じつつ、それでも
「お。今日はついてくるんだな。」
私の「その部分」を図っていたところが、かなりあったんだそうです(可愛がっていただけていたんですね。
まして、「はい!自分これ、苦手分野です!」感を全面に出してはばからない、本当に顔がすぐ真っ赤になってしまうほどお酒が苦手だった私。
「それでも」のところで重ねることができた「得」があったと思います。
ご時世よろしく、今や過去の遺跡感さえ否めない「飲みニケーション」。
賛否両論あるのは重々存じておりますが、それを重々承知の上でそれでも誘ってくださる先輩がいる環境が、もしあるなら。
そして、もしあなたが将来オーナーになりたいと思っているという前提でご提案するのであれば。
そういう機会を持つことのメリット&デメリットを、体験をもって理解しておくことはとても大切な体験になると思います。
未来のことは、考えなくていい
私自身、美容師になる前(志した時点)から「独立開業するために」美容師になった節があり。
アシスタントの時から、未来の願望(=独立開業)からの逆算思考。
「とにかく早く」「とにかく効率良く」
アシスタント時代を過ごそうとしたところがあります。
ですが、自分でサロンを開業して15年弱。
それらの逆算思考がそんなに今の自分に、今のサロンに活きているか?
と問われると必ずしもそうではないように思います。
私のようにアシスタント経験2年となくスタイリストデビュー▶︎デビューから7年後に開業、というようなキャリアを描く美容師もいれば。
5年以上いろんなサロンでアシスタントを経験されてスタイリストデビュー▶︎開業されて活躍されている美容師さんも数多くいらっしゃいます。
でもそれ自体が、運営しているサロンの業況にダイレクトに現れているかと言われれば、私は必ずしもそうではないのでは?と思っています。
誤解を恐れずに言えばアシスタント時代というのはまだ、美容師の卵。
殻の割れていない卵だとするならば、つまりは、
「私まだ、美容師ではないよね。」
そう認識しても過言ではないキャリアなのかもしれません。
であるなら、あまり頭で未来を描きすぎるよりは、今。
とにかく一瞬一瞬。
ヒリヒリ、チクチク刺さってくる刺激、いろんな不安やストレスを糧にしながら、それ自体で評価・判断してしまわないで。
確かめつつの
「今日も、とりあえず一歩。(先のことはようわからんw」
たくさん重ねていかれるといいのではないかと、私は思います。
アシスタント時代は、基礎づくり
アシスタント時代を含めて20代という時間は、自分がどれだけの負荷を受け入れられるかを知り、できる限りそれを伸ばしていく「基礎づくり」。
スタイリストとしても、ゆくゆくサロンオーナーになるとしても、これから続いていく長い長いマラソンを走っていく心肺機能や筋力をつけていくような、そんな時間です。
早くあの人たちみたいにピカピカのシューズを履いて、しゃれたキャップかぶってサングランスなんかかけたりしながらかっこいいウェアで、
「あー今すぐ走り出したい!」
気持ちはよーくわかります。
わかりすぎるくらいわかります。が。
1度走り出したら・・・?
あなたが転んでも皆、我先にみんなあなたの横を走り抜けて行きます(みんなも走ってますから。
あなたが止まってしまった時点で、もしかしたら・・・?
「そこ、どいてもらえませんか。」
そんな世界です。(みんなもあなたと同じように、真剣ですから。
でも。
走り方は、、、「ちょ、、え?まじ?」
みたいなユニークなフォームでも
「あの人、まだ走っている・・・。」
カッコいいキャップもサングランスももはやどっかいっちゃって。
スニーカーもだいぶ年季入っちゃっているけど。
「あの人、伴走してくれている人、めっちゃいる。」
「すっごいたくさんの人から、応援されている。」
そんな光景に出会う世界でもあります。
まだスタートラインの手前にいていい、アシスタント時代。
何を大切にして過ごすのが、将来のためなのか。
イメージしてもらえるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
まとめ
ここまで「いつか自分でお店を持ちたい!」そんな意志を持ってこれから美容師として活躍していこうとされている方(あるいは現在アシスタントとして活躍されている方)に向けて。
「アシスタント時代ってどんなふうに過ごしたらいい?」
をテーマに記事をお届けしてきましたが。
私からのご提案は、「3つの人より多く」。
「雑用」
「技術」
「飲みに連れて行ってもらう」
そして、逆算思考はほどほどに。
アシスタントという立場で過ごす今を大切に。でした。
◇
余談ですが、こんなご時世です。
SNSを通してサロンオーナーの知見に触れられるような交流をアシスタントのうちから持ってみる。
同じテーマでどんな違う回答があるのか「自分で取りに行ってみる」なんてのも積極的でいいかもしれませんよね。
このTOOL MAGAZINE にも、年齢層も幅広く(上に広げているのは私ですがw)、いろいろな立場で美容の仕事に関わっている方たちが記事を寄せてくれています。
ぜひ他のライターの記事もご覧いただき豊かな美容師ライフを育むきっかけにしてもらえれば嬉しいです。
大丈夫!
あなたがあきらめなければ、スタイリストになる未来も、独立開業できる未来も、どっか行っちゃうなんてことはありません。
あなたの成長した先で必ず、あなたのことを待っていてくれています。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
また来月の記事でお会いしましょう。では。
2009年創業 hair design space i.chi.e (千葉県/浦安市)オーナースタイリスト
2021年で美容師としてのキャリア20年の節目を迎え、これまで以上に年代を超えた繋がりや貢献を実現できるきっかけを得たく寄稿させていただくこととしました。
一美容師の視点、一運営者の視点から有益な投稿をお届けしていきます。
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